2026年3月28日、マイアミ。

Ultra Music FestivalのWorldwide Stageに、一人の日本人DJが立った。

Yousuke Yukimatsu。現在は ¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U の表記でも知られる。

2026年のUltra Miamiでは、公式ラインナップ上の「Headliners」カテゴリーに名前を連ねた。

ただ、世界中の多くの人が彼を知ったきっかけは、その前年に公開された一本の映像だった。

¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U | Boiler Room: Tokyo。

わずか1時間のDJセット。

公開から10日で200万再生を突破した。

そして現在、その数字は2000万回を超えている。

世界中で2000万回以上再生されたDJセット。しかし、その1時間ができるまでには17年かかっている。

ここ数年だけを見れば、突然世界に現れたスターに見える。

でも、そうではない。

Boiler RoomがYukimatsuを作ったのではない。

17年間かけて完成してきたDJを、Boiler Roomが世界に見つけさせた。

ここで一つ正確にしておきたい。

Ultraの「ヘッドライナー」といっても、Main Stageの大トリを務めたという意味ではない。Yukimatsuが出演したのは3月28日土曜日のWorldwide Stage。出演時刻は22時で、23時のISOxoへつなぐピークタイムだった。公式ラインナップ上の「Headliners」カテゴリーには、Armin van Buuren、Hardwell、John Summit、DJ Snake、Carl Coxらと並んで名前が載っている。

それでも、日本を拠点に活動し、世界的なヒット曲を武器にしてきたわけでもないDJが、Ultra MiamiのHeadliners区分まで上がってきたことは異例だ。

さらに同年8月8日。

ニューヨーク・ブルックリンのUnder The K Bridge Parkで、Charlotte de WitteとB2Bを行った。

二人はそれぞれソロセットをプレイした後、最後にB2Bで合流した。公演後、CharlotteはこのB2Bを「incredible」と表現している。

Resident Advisorは前年の2025年、Yukimatsuをカバーに起用し、「the DJ of 2025」とまで書いた。

B'z、メタル、ノイズ。最初からテクノの人ではなかった

Yousuke Yukimatsuは1979年、大阪生まれ。

父親は一時期、自宅のガレージでレコード店を営んでいた。家ではDeep Purple、Led Zeppelin、The Beatlesなどが流れていたという。

本人が自分から強く惹かれた最初の音楽はB'zだった。

そこからAerosmithやJudas Priestなどのハードロック/メタルへ進み、さらにDepeche Mode、Sonic Youth、Merzbow、Boredomsと、興味はどんどん外へ広がっていく。

この経歴は、後のDJスタイルを考えるうえで重要だ。

Yukimatsuは「まずテクノを好きになり、そこからDJになった人」ではない。

メタルも、ノイズも、ポップも、実験音楽も、同じ一人のリスナーとして聴いてきた。

現在のセットで、普通なら同居しないはずの音楽が次々に出てくるのは、売れてから作ったキャラクターではない。

もともと音楽をジャンルごとに分けて聴いていなかった。

2008年。「DJさせてください」から始まった

高校卒業後、すぐDJになったわけでもない。

水泳のインストラクターなどを経て、建設現場を中心とした肉体労働の仕事をしていた。

2006年頃、Richie Hawtinや田中フミヤなどのミニマルテクノに惹かれ、大阪のクラブへ通うようになる。

そして2008年。

大阪のパーティー《atmosphäre》へ遊びに行ったYukimatsuは、その会場のサウンドシステムを気に入り、主催者にその場で頼んだ。

家が近いからレコードを持ってくるので、DJをやらせてもらえないか。

出演者ではない。

ただの客だった。

それでも朝7時頃から約1時間、DJをさせてもらえることになった。

最初にBurzumをかける。

反応はない。

そこからSlayerをかけ、Richie Hawtinへつなぐ。

フロアが一気に盛り上がった。

本人が「プロフィール上のDJデビュー」として語っているのが、この一時間だ。

面白いのは、2025年のBoiler Roomで世界が驚いた特徴が、すでにここにあることだ。

メタルからテクノ。

ジャンルではなく、音の強度でつなぐ。

そしてもう一つ。

自分から「やらせてほしい」と言う。

この行動も、その後のキャリアで繰り返される。

DJ NobuとFuture Terror。「まず日本のコア層に認められた」

Yukimatsuは大阪・神戸を中心に活動を続け、KEIHINやDJ Nobuらと接点を持つようになる。

2014年には、DJ Nobuが主宰するFUTURE TERRORのメインフロアでオープニングを務めた。

今では世界各地の紹介文で、このFUTURE TERROR出演がキャリア初期の重要な転機として挙げられている。

ここで重要なのは、まだ大衆的な人気とは無関係だったことだ。

巨大フェスでもない。

SNSのバズでもない。

日本のアンダーグラウンドで、DJを本気で聴いている人たちから評価された。

Yukimatsuの海外進出は、フォロワー数を増やしてから始まったのではない。

信用が先、知名度が後だった。

海外へ行く前に、大阪と海外をつないだ

2015年から2016年にかけて、Yukimatsuの周囲に海外アーティストとの接点が急速に増える。

PANのショーケースではLee GambleとB2B。

Oneohtrix Point Neverの大阪公演ではサポート。

2016年には、自身のパーティー「ZONE UNKNOWN」をスタートする。

Shapednoise、Kamixlo、Aïsha Devi、Palmistry、Endgame、Equiknoxx、Rabitなど、海外の先鋭的なアーティストを関西へ招いた。

ZONE UNKNOWNが始まったきっかけも象徴的だ。

DJ Nobuから、Shapednoiseが日本に来たがっているが、自分はその時期に日本にいないのでイベントをやらないか、と声をかけられた。

Yukimatsuは引き受けた。

本人は後のインタビューで、イベントをやれば海外アーティストと仲良くなり、世界が広がる。そのつながりがヨーロッパでの活動にもつながった、と振り返っている。

つまり彼は、いきなり「海外進出」したのではない。

海外へ呼ばれる前に、自分のいる大阪と海外のシーンを接続していた。

Lee GambleにB2Bを頼み、Arcaに歌ってもらった

Yukimatsuのキャリアを追うと、何度も同じ行動が現れる。

頼む。

Lee Gambleと共演した時、自分からB2Bを持ちかけた。

翌年、Arcaの大阪公演で共演した時には、ライブを終えたArcaに、自分のDJセットで歌ってほしいと直接頼んだ。

Arcaは実際に歌った。

Yukimatsuはこの経験について、Lee GambleとのB2Bを頼んでみたことで、「言わないより言った方がいい」と考えるようになったと話している。

2008年。

「DJをやらせてください」。

2015年。

「B2Bしませんか」。

2016年。

「僕のDJで歌ってください」。

そして2026年には、Charlotte de Witteと正式なB2B公演を行っている。

もちろん、「頼めば夢が叶う」という話ではない。

頼んだ時に相手が受け入れるだけのDJを、すでに持っていた。

ただ、実力があれば誰かが勝手に見つけてくれる、とも考えていなかった。

実力を作ることと、機会を自分で取りに行くことを、同時にやっていた。

2016年、脳腫瘍で人生の優先順位が変わる

2016年7月。

Yukimatsuは自宅で倒れ、脳腫瘍が見つかった。

その後、2度の摘出手術を受けた。

当時は平日に現場仕事をし、週末は朝までDJ。そのまま十分に眠らず仕事へ向かうこともあったという。

治療後、生活は変わった。

建設業の仕事から離れ、DJを中心に生きるようになる。

ここは「病気を経験したから天才DJになった」という物語にしない方がいい。

病気になる前から、すでに8年DJをしている。

Future Terrorに出ている。

Lee GambleやArcaと共演している。

ZONE UNKNOWNも始めている。

病気が才能を作ったのではない。

すでに積み上げていたものに、人生の時間をどこまで使うのか。その優先順位を変えた。

2026年のモントルー・ジャズ・フェスティバルで、サイズを絞った照明の下、ブースでプレイする Yousuke Yukimatsu
Photo: Kalai Ramu / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0

37歳頃、初めて海外でDJをする

初の海外DJは上海。

本人の回想では37歳頃だった。

一般的な「世界を目指す若手DJ」のキャリアと比べると、かなり遅い。

しかし、そこから海外での評価が積み上がっていく。

2017年、Berlin Atonal。

2018年にもBerlin Atonal。

欧州の実験音楽、アヴァンギャルド、クラブカルチャーの文脈へ深く入っていく。

その後はBerghainにも出演するようになる。

ここで、今のYukimatsuにつながる重要な構造ができる。

世界の一般的な音楽ファンより先に、

DJ。

プロモーター。

フェスティバルのブッカー。

音楽ライター。

実験音楽やクラブカルチャーのコアなリスナー。

そういう人たちが、先にYukimatsuを知った。

2022年。Boiler Roomより前に、批評とインターネットの両方で結果が出ていた

2022年、ミックス作品『Midnight Is Comin'』をSingaporeのMidnight Shiftからリリースする。

Pitchforkはこの作品をレビューした。

面白いのは、Pitchforkが注目したのが、現在広く知られる「何でもかける激しいYukimatsu」だけではなかったことだ。

『Midnight Is Comin'』はアンビエント、ドローン、ノイズを中心にした、長く緩やかなミックス。

Pitchforkは、彼の組み合わせ方と没入感を高く評価した。

つまり、評価されている本質は「意外な曲をかける人」ではない。

曲と曲をどう組み合わせ、時間をどう作るか。

DJとしての編集能力そのものだった。

同じ2022年にはResident AdvisorのPodcastにも登場。

さらにHÖR Berlinのセットは、10カ月弱で200万再生を超えた。

2025年のBoiler Roomより3年前に、すでにオンライン上でも大きな反応が起きていた。

Boiler Room以前に、

現場の信用、批評の信用、インターネット上の実績。

三つとも揃い始めていたことになる。

2026年のモントルー・ジャズ・フェスティバルで、目を閉じてブースに向かう Yousuke Yukimatsu
Photo: Kalai Ramu / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0

Berghainまで行ってから、Boiler Roomで「発見」された

2024年にはBerghainのKlubnachtにも複数回出演。

そして同年11月、Boiler Room Tokyoを収録する。

映像が公開されたのは2025年。

ここで爆発した。

Resident Advisorの現行プロフィールによれば、公開から10日で200万再生。

Billboard JAPANが2026年にインタビューした時点では、YouTubeだけで1800万回を突破していた。

多くの人にとっては、この映像が「Yousuke Yukimatsuを初めて知った瞬間」だった。

しかし、時系列を並べれば意味が変わる。

Future Terror。

Lee Gamble。

Arca。

ZONE UNKNOWN。

Berlin Atonal。

Pitchfork。

RA Podcast。

HÖR Berlin。

Berghain。

その後にBoiler Roomが来る。

Boiler RoomがYukimatsuを作ったのではない。完成度の高いYukimatsuを、Boiler Roomが世界中へ配った。

¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U | Boiler Room: Tokyo / Boiler Room

あのBoiler Roomは、実はかなり準備されていた

映像だけを見ると、YukimatsuのDJは衝動的に見える。

上半身裸。

激しく踊る。

ジャンルがどんどん変わる。

思いついた曲を、その場のテンションで投げ込んでいるようにも見える。

実態はかなり違う。

YukimatsuはBillboard JAPANのインタビューで、普段はあらゆるBPMの曲を用意したプレイリストから、その日の流れに合わせて即興的に選ぶことが多いと説明している。

一方、Boiler Roomは持ち時間が1時間と最初から分かっていた。

だから「ここは勝負」と考え、セットをきちんと作り込んでいった。

つまり、あの1時間は偶然の奇跡ではない。

17年間蓄積した即興力を持つDJが、世界へ届く一回のために編集した作品だった。

本人は映画が好きで、一度目と二度目では違うものが見える映画のように、自分のセットにも何度見ても新しい発見があればいい、と話している。

この発想も重要だ。

DJセットを、その場で消費されるBGMとしてではなく、繰り返し鑑賞できる作品として考えている。

だから映像時代との相性がいい。

YukimatsuのDJは「ジャンルレス」だけでは説明できない

Yukimatsuを説明する時、最もよく使われるのが「ジャンルを横断するDJ」という表現だ。

間違いではない。

でも、それだけなら珍しくない。

いろいろなジャンルをかけるDJは世界中にいる。

重要なのは、なぜバラバラにならないのかだ。

Pitchforkは2020年のBoiler Room Tokyoを例に、Mobyの超高速ハードコアからベースミュージック、ケニアのDumaによる極端なノイズ、The Weeknd、映画『Rocky』のテーマ、Jamie xxまで移動するセットを紹介した。

普通なら崩壊する。

しかし、Pitchforkは同時に、Yukimatsuの広範囲なセットが一本の没入感を保っている点を評価している。

その鍵の一つが「強度」だ。

過去のインタビューでもYukimatsuは、音楽を考えるうえで「強度」を重視している。

メタルの激しさ。

ノイズの圧力。

ポップの感情。

静かな音楽の緊張。

ジャンル名は違っても、その瞬間に必要な強さが共通していれば、一つの流れにできる。

だからSlayerからRichie Hawtinへ行ける。

2026年のモントルー・ジャズ・フェスティバルで、ミキサーへ手を伸ばす Yousuke Yukimatsu
Photo: Kalai Ramu / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0

技術的には、かなりオーソドックスなことを異常なレベルでやっている

YukimatsuのDJを見て「特殊なエフェクトや秘密の技術があるのでは」と思うかもしれない。

本人の説明を読むと、むしろ基本的だ。

二つの曲のメロディーがぶつかるなら、中域を下げる。

必要ならボリュームも調整する。

どこなら次の曲を入れられるかを探す。

そして、今でも二曲をつなぐ練習を続けている。

重要なのは、ハイを何時の位置にする、ミッドを何dB下げる、と固定値で覚えているわけではないこと。

耳で、その瞬間に気持ちよく聞こえる位置を探す。

Billboard JAPANのインタビューでは、二曲を重ねただけなのに「これは何のリミックスですか」と聞かれることもあると話している。

ここにYukimatsuの技術の核心がある。

曲を選ぶだけではなく、二曲を重ねた時間そのものを新しい音楽にする。

ジャンル横断を成立させているのは、奇抜な選曲だけではない。

その下に、EQ、音量、タイミング、フレーズ、耳による判断というDJの基本技術がある。

「その街でしかできないDJ」をする

もう一つ、Yukimatsuの選曲には明確なルールがある。

場所を見る。

オーストラリアならAC/DC。

Lollapaloozaなら、フェスの創設者Perry Farrellがボーカルを務めるJane's Addiction。

シアトルなら、その土地につながるNirvana、Pearl Jam、Soundgarden。

Boiler Room Tokyoでは「世界平和」というテーマを意識して、最後の流れを作ったという。

これは単なるサービス精神ではない。

イベントの歴史。

土地の記憶。

前後に出演するDJ。

レーベル。

観客。

そうした文脈をセットの中へ取り込んでいる。

本人は、DJはアーティストであると同時にエンターテイナーでもある、という趣旨の話をしている。

自分の美学を押しつけるだけではない。

しかし、客が知っている曲を並べるだけでもない。

自分にしかできない選曲と、その場所でしか意味を持たない選曲を重ねる。

だから、Berlin Atonalのような実験音楽の場にも、Ultra Miamiのような巨大フェスにも適応できる。

プロデューサーではなく「DJ」として世界へ行った

現代のダンスミュージックで世界的なDJになる王道は、かなり明確だ。

曲を作る。

ヒットさせる。

レーベルからリリースする。

SpotifyやYouTubeで数字を作る。

その楽曲人気をライブやフェスへ持っていく。

Martin Garrixも、John Summitも、Charlotte de Witteも、DJであると同時に強力なプロデューサーだ。

John Summitがどうやってそのルートを通ったかは、別の記事で追っている。

Yukimatsuは、このルートとはかなり違う。

2026年のBillboard JAPANのインタビューでも、自分の曲はほとんど作れていない、自分は「DJ」だと思っていると話している。

それでもCoachellaへ行った。

Ultra MiamiではHeadliners区分に入った。

Resident Advisorは「the DJ of 2025」と呼んだ。

Charlotte de WitteとB2Bした。

これは、DJを目指す人にとって大きい。

Yukimatsuは、

プロデューサーが知名度を得てDJもする

のではなく、

DJそのものを作品にして世界へ行った。

選曲。

ミックス。

構成。

身体性。

土地への反応。

セット全体の物語。

それ自体がコンテンツになった。

なぜCharlotte de WitteとB2Bするところまで行ったのか

2026年8月8日、ニューヨーク。

Under The K Bridge Park。

Charlotte de WitteとYousuke Yukimatsuは、それぞれソロセットをプレイした後、B2Bでイベントを締めた。

公演自体は数カ月前から正式に「Charlotte de Witte b2b Yousuke Yukimatsu」として販売されていた。

Charlotteは公演後、YukimatsuとのB2Bを「incredible」と表現した。

Yukimatsuも発表時、Charlotteの音楽が以前から好きで、KNTXTの曲を自分のDJでも多くプレイしていると話している。

二人のスタイルは同じではない。

むしろ違う。

Charlotteはテクノを中心に巨大なオーディエンスを動かす。

Yukimatsuはジャンルそのものを飛び越える。

だからこそB2Bとして面白い。

そしてキャリアを最初から見直すと、ここにも一本の線が見える。

2008年、朝7時の大阪で「DJをやらせてください」と頼んだ。

2015年、Lee GambleにB2Bを頼んだ。

そして18年後、世界的DJの一人とニューヨークで正式なB2B公演を行う。

偶然一度バズった人のキャリアではない。

17年間を並べると、成功の順番が見えてくる

Yukimatsuのキャリアを簡略化すると、こうなる。

2008
大阪でプロフィール上のDJデビュー。
2014
DJ Nobu主宰FUTURE TERRORへ出演。
2015
Lee GambleとB2B。Oneohtrix Point Never大阪公演をサポート。
2016
ZONE UNKNOWN開始。Arcaと共演。脳腫瘍の手術。
2017
Berlin Atonalへ出演。海外活動が本格化。
2018
Berlin Atonalへ再び出演。
2020
Boiler Room × Super Dommuneでプレイ。
2022
『Midnight Is Comin'』をリリース。Pitchforkレビュー、RA Podcast、HÖR Berlinのセットが大きく伸びる。
2023〜2024
国際フェス、欧州クラブでの出演を拡大。Berghainにも出演。
2024年11月
Boiler Room Tokyoを収録。
2025
映像が世界規模で拡散。10日で200万再生。その後2000万回以上へ。Resident Advisorがカバーに起用し「the DJ of 2025」と紹介。
2026
Lollapalooza、Ultra Miami、Coachellaなどへ出演。Charlotte de WitteとニューヨークでB2B。

こうして見ると、順番はかなりはっきりしている。

独自性 → ローカルの信用 → 国際的なコア層の信用 → 批評 → オンラインでの実績 → 大規模なバズ → メガフェス。

Boiler Roomから始まったのではない。

Boiler Roomは最後の加速装置だった。

YukimatsuからDJが学べること

ここからは解釈だ。

Yukimatsuの物語を「諦めず続ければ夢は叶う」にしてしまうと、ほとんど役に立たない。

もっと具体的に分解できる。

1. 売れる前に、自分にしかないものを作った

世界に知られるずっと前から、SlayerからRichie Hawtinへつないでいた。

バズを取るためにジャンルレスになったのではない。

ジャンルレスなDJを十数年続けた後にバズった。

2. 大衆より先に、目利きから信用を得た

Future Terror。

Berlin Atonal。

Berghain。

Pitchfork。

Resident Advisor。

HÖR Berlin。

一般層への知名度より、DJやブッカー、批評家からの信用が先だった。

3. 海外から呼ばれる前に、海外とつながった

ZONE UNKNOWNで海外アーティストを大阪へ呼んだ。

「海外進出」を飛行機に乗ることから始めなかった。

ネットワークを先に作った。

4. チャンスを待つだけではなかった

出演させてほしい。

B2Bしたい。

自分のDJで歌ってほしい。

言わなければ起きないことを、自分から起こしにいった。

5. バズる瞬間だけは、徹底して準備した

普段は即興する。

しかしBoiler Roomは1時間を作り込んだ。

チャンスが来るまで自由に鍛え、チャンスが来た瞬間は偶然に任せなかった。

6. 基本技術を捨てなかった

派手な選曲の裏で、今も二曲をつなぐ練習をしている。

EQ。

音量。

タイミング。

耳。

基本を極端なところまで積み重ねたから、普通なら成立しない選曲が成立する。

2026年のモントルー・ジャズ・フェスティバルで、赤い照明のステージにひとり立つ Yousuke Yukimatsu
Photo: Kalai Ramu / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0

日本から「DJだけ」で世界へ行ける

日本から世界的なダンスミュージックアーティストを生み出す話になると、多くの場合はこうなる。

世界で通用する曲を作ろう。

もちろん、それが王道なのは変わらない。

しかしYousuke Yukimatsuは、別の道が存在することを示した。

40代半ばで世界的なブレイク。

巨大なオリジナルヒットを武器にしたわけではない。

海外移住から始めたわけでもない。

日本でDJという行為そのものを磨き続けた。

その結果、Ultra MiamiのHeadliners区分に名前が載り、Coachellaに出演し、Charlotte de WitteとB2Bする場所まで来た。

Billboard JAPANのインタビューで、Boiler Roomが大きくバズったことについて聞かれたYukimatsuは、要するにこう振り返っている。

やっていること自体は、ずっと変わっていない。

そこが、この物語で最も重要なのかもしれない。

世界に合わせて自分を作ったのではない。

17年間、自分のDJを更新し続けた。

そして最後に、世界の方がそれを見つけた。

2000万回以上再生されたのは、1時間の映像だった。

その1時間ができるまでには、17年かかった。


主な参考資料

TURN「¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U インタビュー」
turntokyo.com/features/interviews-yousuke-yukimatsu

Resident Advisor「¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U」アーティストプロフィール / バイオグラフィー
ra.co/dj/yosukeyukimatsu-jp
ra.co/dj/yosukeyukimatsu-jp/biography

Resident Advisor「The Art of DJing: ¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U」
ra.co/features/4445

Resident Advisor「¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U: Firestarter」
ra.co/features/4447

Pitchfork「¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U: Midnight Is Comin’」
pitchfork.com/reviews/albums/yousuke-yukimatsu-midnight-is-comin

Billboard JAPAN
www.billboard-japan.com/special/detail/5207

Ultra Music Festival
ultramusicfestival.com

Local 10「Ultra Music Festival Day 2 のラインナップ」
www.local10.com/entertainment/2026/03/26/ultra-music-festivals-day-2-here-is-the-lineup-for-saturday

The Bowery Presents / Under The K Bridge Park
bowery-prod-terminal5nyc.azureedge.net/new-york-metro/venues/under-the-k-bridge-park

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著者

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Mackey

RAVRS Founder

クラブ・音楽フェスのオーディエンス歴約20年。レイバーとして国内外のダンスミュージックシーンを肌で体験。

会社経営の傍ら、2025年4月からクラブDJとして本格的に活動を開始。東京の主要ナイトクラブでプレイし、週末のピークタイムへのゲスト出演も経験。

国内最大級の音楽フェス「World DJ Festival Japan」には、2025年・2026年と2年連続で出演。

アメリカやフランスでの居住経験を背景に、時代やジャンルを横断する幅広い選曲を行うオープンフォーマットDJ。

今後は作曲にも取り組み、プロデューサーDJを目指す。

出演歴
Zouk Tokyo/1OAK Tokyo/SEL OCTAGON TOKYO/CÉ LA VI TOKYO/RAISE/V2 TOKYO/T2 SHINJUKU/WOMB ほか
フェスのステージでプレイするMackey